短編集
冷静になれば、犯人が分からないから見回りを頼まれているのだと、理解できる。
子供だよね、俺。
しかし、圭は何者なんだ?
侵入者、コイツなんじゃないだろうか?
口を塞がれたまま、視線を後ろに向けると耳元で囁く。
「息が荒いけど、感じちゃう?」
自分の中で、冷たい風が吹いた。
調子にのるんじゃねえ!
ベロリ……手のひらを舐め、緩んだ手に噛みついてやる。
「痛っ、まて、それは予想外なんだけど?ちょ、シャッターチャンスが!先生、見てないで撮って、撮ってよ!」
噛まれていない手で、携帯を先生に渡しながら余裕の圭。
憎らしい!
「あはは!これは、撮らないとな。待て、動くなよ?」
動くに決まってんだろ?頭、オカシイのか、こいつ等!
口から圭の手を解放して、口もとを袖で拭う。
ハンカチを出して、それを圭に渡した。
「拭けよ。てか、手を洗って来い!」
不機嫌な俺を、先生が携帯で撮り続けている。
「先生?いい加減にしてください。」
睨んだ視線を向けると、もう一枚。
「クク。年相応に楽しめ、見回りの許可は今夜だけだ。目的は小学生の観点なんだから、頼りにしているぞ!」
今夜も出没するのか分からない。
ただ、現れる場所の特定を絞るため。
その参考が俺達の役目だ。同じ小学生。
きっと同い年か年下だとしても、夜の校舎に一人でも平気な年齢だろう。
一体、何の目的で?
許可のある状態でもワクワクする。
無断で侵入すれば、見つかった時点で怒られるだろう。
夜の闇の中、恐怖と勇気と冒険と。俺の思いつかなかった行動力。
出来れば、会ってみたい。話をしてみたい。
友達になれるなら、なってみたい。どんな奴なんだろう?
先生の話が終わったので、圭は手を洗いに職員室から出て行く。
「あ、先生。圭の携帯、俺に渡してください。」
油断大敵だな、圭め。
「ああ。抜かりないよね、アイツ。」
ニッコリ笑顔の先生に、俺は笑顔で首を傾げた。
「圭大から言われた通り、ロックは掛けているから、データを消すのはムリだと思うぞ?」
圭ー!?