短編集

暗闇が呼び寄せて


夜の生徒会室。
明かりもつけずに作戦会議。

「どうだ、お前達。夜の校舎に潜入した感想は?」

生徒指導の先生のセリフじゃないよな。

「ま、ドキドキしますよ。正直、許可を得ていても、ここに居て良いのか戸惑うぐらいに。」

月明かりが、教室を静かに照らし、3人の影も薄ら見える程度。

「そうか、そうか!で?お前らなら、どこへ行く?」

どこへ行くか……
潜入する前には、自分の教室とか職員室とか、理科室を想像した。
しかし、意外と暗闇への恐れなのか、大胆に動きたいとは思えない。

一人で、好きに動く?
見回りの警備員に見つかるかもしれない状況で?

実際、犯人は前日に見つかり、慌てる様子が無かったと言う。
本当に、同じ小学生なのだろうか?

「俺は、好きな人の教室に行ってみたい。」

圭は窓の外を見て、高等部のある方角を見つめる。
オイオイ、自分の願望かよ。

ああ、願望を聞くのが目的だったんだよね。
忘れてたよ。

「圭大は、淡い恋をしているんだな。どこかの一直線なガキと違って!」

それは、どこの、誰のことかな?
恋が何だと言うんだ。別に初恋が遅くても、いつかは俺にも訪れる。
それを慌てて、自分から探すものでもないだろう。

恋愛経験が無いからガキって、そんな基準ならいらない。
俺には、当てはまらない。
出逢いなんて、物語のような運命的なものにならないんだ。

「よし、出没した6年の教室へ行ってみよう。」

え?俺達の学年の教室だったの?
懐中電灯を手に持ちながら、それには明かりの役割を封じ、口数も少なく歩く。

ガシャン……
大きな物音が、目的の階より下から響いた。

「何だ?俺は、下を見てくる!お前達は、ここに居ろ。」

先生が懐中電灯の明かりをつけて、音のした方へと走って行った。

「どうする、生徒会長様。俺達、ここでイケナイこと、しちゃう?」

圭が距離を縮め、俺の腰に腕を回して密着した。


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