短編集

明るみに出ても変わることなく


その夜は眠れなかった。
朝日は眩しく、生徒会長が遅刻をするわけにはいかない。

いつもと変わらない早い時間帯、教室に鮫島先生が待っていた。

「昨日は酷いわ。私、待っていたのに。誰も来ないうちに、続きをしましょう?」

ウキウキと近づいてくる先生。
胸元がユラユラと、大きな胸が揺れている。
無意識で、その大きな胸に触れた。

「きゃ?どうしたの、今日は積極的なのね。いいわ、どんどん触って!」

頬を赤らめ、息を荒げて俺に近づく先生に告げる。

「ごめんなさい、“俺”は感じません。先生じゃ、ダメみたい。」

俺のセリフに、先生は表情が固まり、動きも止まった。
いつもと同様に、先生を放置して教室を出る。

どうしてだろう?
昨日の感触が、まだ手にある。きっと、この手のひらサイズ。
手を眺めながら、開いたり閉じたりを繰り返しながら廊下を歩く。

「エッチ。」

小さな女の子の声。
歩みを止めた。

今、自分の横を通り過ぎた女の子だ。
慌てて振り返る。

彼女も振り返って、俺に意地悪な笑顔を向けた。

「今度は、捕まらないわよ。フフ。あなたは、黙っていてくれるよね?だって、言えないはずよ。私に、あんな事をしたんだもの。」

あんな事って、わざとじゃないけど。

「待てよ、鈴野 遊姫(すずの ゆき)!今度は、捕まえてやる。俺に落ち度が無いように、だ。そうじゃなきゃ……」

きっと、今頃、事件は解決していたのに。

「無理よ。私に触れずに、どうやって捕まえるの?楽しいわね。また、遊びましょう。夜の校舎で、二人。内緒よ。」

私の胸を触ったことを、秘密にしたいでしょう?
そんな微笑に、俺の心は拘束される。

暗闇で溺れた恋情。

彼女は、人差し指を唇に当て、秘密を共有したことを俺に示す。
……拘束の恋情……




end
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