短編集
俺の下には、潤んだ唇。
聴こえる…
『おいでよ…気持ちいいよ~?知ってるよね?』
なんて、悪魔のささやきが…。
知ってる…けど、それで泣いた。
しかも、今度は寝ている…起きなければ、分からない?
いや、駄目だ…そんなことしたら…
【フワッ】
首を振る俺の風が、櫂里の匂いを運んだ。
【チュッ】
…気がついたら、重ねてました。軽くデス!
自己嫌悪…の俺を見つめる櫂里。
最悪です!!最悪の、グッドタイミング!!
「…南斗…また、チュウした?」
【ズキズキ…】
「…いいえ?何も、しておりませんが…気のせいでは…?」
視線を逸らし、櫂里の上にいる言い訳の出来ない状況。
嫌な汗が流れる。
「嘘つき~~。うっ…くっ…うぇ…うぁ~~ん」
泣かしてしまいましたよね?
「ごめん。嘘をつきました。ごめんなさい…チュウしました。」
「…何で、したの?…友達…だよ?」
【ズキッ】
トモダチ…
「櫂里…は、俺を友達…以上に見えない?」
胸が、締め付けられる。
激しい痛み…
「…どういうこと?」
涙目で俺を見つめる。
俺は、櫂里の上から退いて…背中を向けて座る。
「俺は、櫂里が好きだ。キスだってしたい…」
櫂里の起き上がる音。
沈黙。
俺は、何を言った?
キスしたいって…勝手に、二回もしたのに?!
あぁ、言葉を選べない自分が腹立たしい。
「…南斗…嫌じゃないよ?けど、好きって…よく分からない…の。」
…はぁ。
ため息が出た。
俺は、振り返る。
「俺は、今日…お前に告白しようとした奴に嫉妬した。誰にも、渡したくない。…櫂里…」
このまま感情を高めたら…
無理やり、何をするか分からない。
「ごめん…。櫂里、晩御飯は用意できてる。食べて、帰って?俺、この部屋にいるから…すぐに、部屋を出てくれるか。頼む…櫂里、ごめんな…」
俺は、視線を逸らして部屋の隅で着替えを始めた。
櫂里がベッドから立ち上がり、部屋を出る音を…背中で感じた。
…畜生!!
どうすれば、良かったんだ?