短編集
花嫁の標本~年下のキス~
妻ですか??
大学教授の父が、講義に招待したのは…高校生。
皆は、若さというより…顔立ちと、語る声に惹かれた。
私は、語る聡明さに感銘を受ける。
講義の時間は、あっと言う間に過ぎた。
残りの時間に、質問を受ける。
「彼女は、いますか?」
お決まりに、私は興味がない。
「この中に、妻がいます。」
その言葉には、驚いた。
しかも…自分のことだとは、思いもよらない。
「地球人は愛情を、キスで増やすと聞いた。俺のキスで落ちればいい…俺の花嫁。研究対象の標本…俺の子を産んで?」
志茂田 孝彬(しもだ たかなり)志茂田 成哉(しもだ なりや)
森行 朱莉沙(もりゆき ありさ)森行 桐沙(もりゆき きりさ)
花嫁の標本~年下のキス~
森行 朱莉沙(もりゆき ありさ)
教授の父がいる大学に入り…2年。
単位に必死な人が落ち着き始めた頃…私の周りに残ったのは、誰もいない。
友達を作るチャンスを失った…こんなとこ、来るんじゃなかった!!
皆の目が違うし…
くすん…誰も、信じられなくなりそうだ。
それでも、やはり自分が選んだ大学。
父に似たんだと、理解する
…そんなある日…
父が、講師の依頼をしたのは…明らかに高校生。
室内は、異様な空気を醸し出していた。…が、数分。
心地よい声…語る姿は、誰にも引けを取らない。
眼鏡の奥の、切れ長の目は…惹きつけ、男をも捕らえるかのように…講堂は静か…
私の耳に入るのは、声じゃない。目に入るのは、見えるものではない。
話す内容…知力…何て、凄いんだろう。
時間は、あっという間に過ぎた。
残った時間は、数分。
質疑応答…
「はい!恋人はいますか?いないなら、立候補しても良いですか?」
ありきたり…私には、興味のない話。
付き合うのが、嫌じゃない。むしろ、人並みに恋して…
「あぁ、ふふ。妻なら、この中にいますよ♪」
……?
自分の妄想から、違和感のある言葉に現実へと戻る。
…幻聴?
これ、夢じゃないよね…冗談なのかな??
「ね?朱莉沙(ありさ)…?」
……。
どこの、アリサちゃんでしょう??
周りを見ると、全員が私を見ていた。
……えぇ~~っと、つまり?私…ですか??
「つ、妻ぁ~~~~?」
父を恨むことは、もう…無いと思っていたのに…
絶っっ対ぃ~~に、許さない!!