短編集
愛の巣(愛情)
何度と繰り返すキスは、いつも同じではない。
自分からのキスも、相手から愛情を受けているのではないかと思う…
感覚や愛情…深まる想いは、回数に比例したりしない。
君は、俺の花嫁…愛情を頂戴…標本に選んだんだ。
俺の愛情は、君に伝わるだろうか……
共に住むけど、どうしていいのか分からない。
彼女の父から、取扱い説明書をもらった…が、分厚くて…難しい。
その1ページ目は、キスの説明から始まるのだ…
『地球人は、キスで愛情を増やすのです。回数を重ねるごとに、愛情を与えましょう。相手は、メロメロになっちゃうぞ♪その状態を、愛情が深まったと言うのだ。そんな風に深まった愛情は、返ってくる。つまり、相手から愛情を注いでくれるようになるという美味しい特典が!!頑張ってくれたまえ。』
恋愛とは、難しい…環境の似た星…子を作る知識もなく、ここに来た俺達を博士が保護してくれた。
俺達の作るゴミをダイヤと呼び…そんな物と引き換えに…博士は、何でも協力してくれたのだ。
知識のない俺に、博士は『花嫁の標本』も…くれた。
知的な…女性…柔らかく、良い匂いがする特別な存在を……
朝…
「孝彬、起きて。学校に遅れるわよ?」
志茂田 孝彬(しもだ たかなり)
この星での生活の為、博士がつけてくれた名。
そして、学校生活で…この星の常識を得る。
起こしてくれるのは、俺の花嫁…愛情を与える。
観察の対象の標本…森行 朱莉沙(もりゆき ありさ)
「ありさ…キス、して。」
愛情を、何度か注いだら…キスをしてくれると言う…
それは、いつなのかな?
「起きないと、あなたの分のお弁当も大学に持って行くよ?」
言葉を間違えると、どうやら…愛情が減るようだ。
「起きるから…愛情を注いでも良い?」
寝た状態で甘えてみる。
「孝彬…今日、帰ったら…話があるの。」
真剣な眼…
「今じゃ、駄目なの?」
「ダメよ…どうして…」
朱莉沙は、口を閉ざす。
胸に表現できない重み…痛みなのか熱さなのか…理解できない。
取説にも、書いていない。
俺の理解できない感情…これも、標本の君が与える愛情だろうか?
「…孝彬、私…先に出るから。」
「いってらっしゃい」
「うん、行ってきます。」
会話は、増えている。
次の段階に行けるのだろうか?
取説には、事細かに状況例もある。
しかし…これだけ分厚い書物にも書かれていない状況が望む…
俺は、どうすればいいんだろうか…
愛しさ…苦しいような想い。
朱莉沙…
学校へと向かう。
道のりに、出合う女の子達と言葉を交わす。
「好きです!付き合ってください!」
「ごめんね。俺には一人…決めた人がいる。その人以外に、想いは抱けない。」
この日本では、一夫一婦制。朱
莉沙以外への想いは不倫。倫理に反する…
誰かへの愛情を一人以外へ?そんな事、出来るはずがない…