短編集
だって、彼女一人でも得る情報は果てがない。
研究の結末を知らない…俺は、永久に迷路へと迷い込むのでは??
たどり着く先は、出口?本当の答え?
分からない…
博士は言った。
答えは、俺一人では見つからないと。
朱莉沙…苦しいんだ。
この想いは、普通なのかな…愛情を、もっと頂戴……
授業は、理解できる。理解できないのは、この星の常識。
しかし…自分のいた星でも、他に興味を示さず…浮いていたと弟が言った。
どちらにしても、欠けている常識がないと朱莉沙の愛情は得られない。
休み時間、本に視線を向けて耳は周りに集中する。
耳に入る情報で、状況判断。まずは、そこから…
「やあだぁ~、もう!くすくすくす…」
「ふふ…本当に、イヤなの?」
…「また、イチャイチャだぜ?」
「うらやましいのか?」
「あれは、ないわよ。」
「見ていないところでやれって話」
「続かないわよ。彼、他の子にも」
……視線を注目の二人に向けた。
皆の視線を受け、中傷を知りつつ取る行動とは??
窓際で、男子生徒のヒザの上…女子生徒が座って彼の口にキス。
男子生徒の手は、服の中…
視線を戻して、本を睨みつけた。
しかし、目に映る文字は形を成さない。
何だ??目が回るような…頭に上る熱…
心臓がありえない音を響かせ、苦しいような…急かされるような感情。
俺は席を立ち、教室を飛び出した。
思い切り走り、止まったような思考の中…暗闇を抜けるような光。
「…孝彬?どうして、大学に??」
気が付けば、手には瞬間移動の装置…汗だく…
目の前にいる朱莉沙に抱き着く。
「え??ちょ、どう…」
周りを気にしていた朱莉沙は、俺の様子に背中を優しく撫でた。
ほっとする…胸に、留まっていた何かが出たように息がもれる。
「気分が悪いの?家に帰る?」
今、この温もりを逃したくなくて首を振る。
「…ここは、目立つし…歩ける?移動をしよう?」
優しい声…
朱莉沙の歩調に合わせ、抱き着いたまま移動した。
「朱莉沙、俺…どうすればいい?」
「孝彬…私も、どうしていいのか分からない。今日、帰ってから話そうと思っていた。あなたは、私の愛情を求める。でも、私にはキスをして…その…それ以上を望まない。あなたは、私を標本だと言ったよね?私は、あなたにとって…本当は何?」
キス以上…
「望んでも良い?望めば…応えてくれる?俺…」
顔を上げ、視線を朱莉沙に向ける。
…真っ白…
考えも想いも、止まったような時間。
朱莉沙の目に、涙があふれ…零れた。
【ズキッ】
痛み…
これは、朱莉沙の痛みを感じた?それとも、俺の感情…?
「朱莉沙…?」
「分からない…あなたの愛情は、私とは違う。あなたは…違うのね…私“たち”と。」
暗闇と凍てつくような寒さ……
それも、愛情なのだろうか?俺が求めたのは……
君は標本…花嫁の標本。俺の妻…
博士が俺に与えた。
俺は、君に愛情を注ぐ…注いだ愛情は、返ってくる…はず。
俺の愛情が間違っている?
育たない…得られない愛情…欲しいと願うのに……