短編集
(幸せ)
一緒に食事をし、朱莉沙が洗い物をしている間に風呂へ行く。
俺が出て、テレビに夢中になっている間に、朱莉沙がお風呂へ行ったのだろう。
湯上りの朱莉沙が、俺の隣に座ってテレビを見始めた。
少し触れる程度の距離。共に過ごし、共有する情報。
異なる考え方や反応…少しずつ増える何か。それが愛情なのか、まだ…分からない。
夜も更け、眠気に襲われる。
「…?孝彬、眠いの?」
視界がぼやけるように、ウトウト…
朱莉沙に寄り掛かり、温もりが伝わる。
これは、俺の体温?それとも、朱莉沙?
…二人の温もりが重なったんだろうか…
「ほら、しっかり立って。歩ける?ここで寝ると、風邪をひいちゃうわよ。」
思考は、ほとんど停止の状態で歩みを続けるが不安定。
「孝彬、もう少し…」
ベッドに、足が絡んで倒れた。
「…重い、ちょ…孝彬…」
おぼろげな視界に、頬を染めた朱莉沙の表情。
その視覚情報を最後に、睡魔へ溺れた。
腕には、温かい柔らかな感触。
「朱莉沙…」
夢心地の至福の時間…
夢うつつ。甘い香りと、温もりを味わう。
自分の身体に密着し、時に動いている…?
そっと目を開けると、目を閉じて寝ている朱莉沙の顔が見えた。
明け方の薄らとした光が、二人を優しく包む。
腕に抱きしめた朱莉沙が無防備な寝顔で、俺の胸元に頬をすり寄せた。
ドキドキが一気に押し寄せる。
息が出来ないほどの圧迫。
揺れる髪が甘い匂いを漂わせ、布団の中からは、温もりと朱莉沙の息遣い。
堪らない…自分の手にあるのに、満足できない。
もっと…求めているのが何なのか分からない。
それが理解できないのに、欲求が熱を発する。
熱い…布団を押し退け、体を傾けた。
朱莉沙の体も少し動いたので、視線を向ける。
【ドクッン】
心臓が一瞬、止まったのかと思った。
朱莉沙のパジャマの上着から、白い肌が見える。
目は釘付けになって、手が勝手に移動した。
誘われるまま…そっと、白い部分に触れる。
「…ん。…や…」
寝返をした朱莉沙の可愛い仕草に、俺は固まって動けなくなった。
そのままの位置を保った手は、朱莉沙の お腹の上。