短編集
恋人の標本~侵略のキス~

現実主義


地球人の恋人は、愛情をキスで増やすと言う。
心はcosmos。無限に広がる未知の世界…俺は一つの小さな世界を侵略する。
この世界は広い…俺が求めるのは、君の心。
征服してみせる…小さな未知の標本…侵略するんだ。
キスで…その世界は、俺色で染まる…俺だけのモノ……



森行 桐沙(もりゆき きりさ)高校1年。
今日は晩ご飯の当番…カギを開け、家に入る。

父は大学の教授。
姉は、父の勤務している大学に通う2年生。
今日は、テスト期間が終わって早く帰ったので私一人の…はず。

リビングには、居ないはずの人の気配。
……泥棒??

手に金属バットを握り締め、ソファーに近づく。
父が頼りないから、防犯・防護用のものは近くにある。

金属バットに、意味は…ない。
殺人にならない程度に、ぶん殴ってやる!!

ソファーには、男…この制服…同じ高校??
しかし、知らない奴だ…顔立ちは良いようだが、許さない。

顔で許されるほど、甘くはないぞ?
世間は、甘いかもしれんが!!


「ね、殺気が消えないのは何故かな?」

そっと目を開け、寝たままの姿勢で尋ねる…悠長な。

「くくっ…泥棒に、油断は禁物♪どうしてほしい?」

私の振り上げた金属バットに視線を移し、ニッコリ。
余裕の笑顔…何だか、無性に腹が立つ。

「やだなぁ。ずっと、一緒に住んでいたんだよ?この一か月♪」

……へ?

『ズット、イッショにスンデイタ…』

??はぁ?!

「ふふっ。くすくすくす…博士が、一緒に住もうって♪俺は、桐沙をもらったんだ…恋人の標本に。」

お父さんが…住もうって、言った??
いや、それよりも…気になるのは、その後のセリフだ。
私を『もらった…恋人…標本』

標本…って、何??

「俺、宇宙から来て何もわからないんだ♪恋をしよう?俺の子を産んで…桐沙…キスで、愛情を育てるんだよね?してもいい?」

……あの、これ…夢ですか?
現実…じゃ、ないよね??

「名を名乗れ!!馬鹿者!見ず知らずの人間(?)への好意などあり得るか!!近づくな…受け入れない、認めない!うわぁ~~ん!!」

現実だと認めたくなくて、外に飛び出した。
後を追いかけてくる奴から、逃げながら…

何が、どうなっているの??
必死で考える。

私は、現実主義だ…
宇宙や化学は好きだが、論外!!

私は後悔する…家にいれば、姉を護れたのかもしれないのに…
姉は、私を心配し…私は、姉を心配して…家に帰るのだ…

罠だと知らずに……


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