短編集

恋人の定義


朝、目覚ましが鳴る前に起きる。
部屋に異常はない。
着替えも、何故かキョロキョロ…周りを気にしながら。

ドアを開けると、静かないつもと同じ日常。
ただ…台所に姉はいない。

朝食の準備を済ませ、時計を見る。
当番ではない日は、これぐらいに起きないと遅刻だ。
…奴は、朝食も食べずに行ったのかな??

何故か、気になる。
姉のいない感覚が、何かを狂わせる。

宇宙人は、食べないわけじゃ無さそうだし…実際、家の食糧が減っていたわけだし…
お父さんは、いつも自由に行動するから放っておいても良いとして。

気になる。
家を先に出たのなら、何だか安心するかもしれない。
いるなら…
えぇ~~い!気になる!!

追い出せば、姉の部屋を取り戻せるかな?
…そっと、覗く。
布団の膨らみ…もそもそ動き、寝息が聞こえる。

…遅刻…
桐沙、放っておくのよ!遅刻しても、私の責任じゃない。
同居しているなんて、誰も知らない。
起きて、一緒に行くとか言われたらどうするの?
いや、無事に起こす事が出来るのか?

…うがぁ~~!!見過ごせない!
部屋に入り、少し離れた位置で叫ぶ。

「成哉!!起きなさい!遅刻するわよ?私は、声をかけたからね?知らないから!!」

…反応を見る。

「ん…桐沙?眠い…もう、ちょっと…あぁ、違うか…キス、してくれたら起きるよ?」

棒読みで、寝言のようなセリフ。
…ムカカッ!!何だか、イラつく。

「一生、寝てろ!!」

階段を下り、自分のお弁当をカバンに入れる。
目の前には、父と奴のお弁当…忘れて行ったら、晩御飯抜き。
晩に電子レンジ無しで冷たいまま喰ってもらう。

…ん?住むのを、認めたことになってない??
うわぁあ~~ん!!違う!私が遅刻する…
忘れるのよ!私…現実を生きるのよぉ~~


駅まで歩き、電車に乗る。
幾つもの制服が並び、混雑に安堵する。
私の日常だ…何も変わらない…

「あの、俺…隣の男子校なんだけど…」

声をかけられ、頭が真っ白…

「また、返事を聞かせて。」

駅で降りていく後姿を見つめながら、告白されたのだと認識する。
え?彼氏??誰かと付き合う!?


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