真夜中の初詣は恋の予感
 恋人でもいればこんな不安が消えるのだろうか。
 だけど、そんな他人任せな不安解消がいいとは思えない。
 なにより、自分が一歩を踏み出す気にならないと。

 順番が来て歩を進め、二礼二拍手をしてお参りをする。
 いいことありますように、とお願いをして次の人に場所を譲り、歩き出す。

 おみくじを引こうか迷って立ち止まったときだった。

「おねえさん、もしかしてひとり?」
「さっみしい!」
 男性ふたりの声に、私は振り返った。

 私より少し若いくらいだろう年齢の男性がふたり、にやにやとこちらを見ている。服装はちゃらくて、まっとうに働いているようには見えない。

「おねえさん、これから遊びにいかない?」
「もう帰るので」
「いいじゃん、どうせ誰にも相手してもらえないんだろ?」
 ひとりがにやにやと手を伸ばしてくる。

 嫌だ!
 思わず逃げようとしたが間に合わず、腕を掴まれる。

「や、やめてください」
 恐怖に声が震える。
 周りは私たちの様子に気が付かずにがやがやと賑やかだ。

鹿山(かやま)さん!」
 男性の声がして、はっとそちらを見ると、会社の同僚の立河(たちかわ)さんがそこにいた。
< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop