真夜中の初詣は恋の予感
「この近所に住んでるんです」
「へえ、俺もですよ」
 彼は驚きで目を丸くしたが、私も同じように目を丸くした。

「ぜんぜん知らなかったです」
「意外なもんですね」
 彼がにっこり笑うと、夜の冷たい空気が急に温かくなったかのようだった。

「もうお参りしました?」
「しました」
 彼にたずねられ、私は答えた。

「鹿山さんはなにをお願いしたんですか?」
「特になにもなくて……いいことありますようにってお願いしました。立河さんは?」
「……内緒かな」
 彼の瞳がいたずらっぽく私を見つめ、どきっとしてしまった。

「あ、あけましておめでとうございます!」
 彼は思い出したようにそう言った。

「あけましておめでとうございます」
 私も慌てて返した。

「驚いてしまって、新年のあいさつを忘れてしまってました」
「私もです」
 苦笑して、私は答える。

 ここで彼に会えるなんて、もう神様がお願いをかなえてくれたような気がする。
 だけど、これはただの偶然、彼との縁なんてすぐに切れる程度のものだ。
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