【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
1.あなたのおかげで今、わたしは幸せです

1.

(なんだか信じられないわ……)


 フィオナは微笑みながら、自身のお腹をそっと撫でる。
 夫であるハリーと結婚して四年、ふたりは子宝に恵まれなかった――つい数日前までは。


『おめでとうございます。妊娠していらっしゃいますよ』

『本当ですか?』


 医師から懐妊を告げられ、フィオナは心の底から喜んだ。長年の夢が叶ったのだから当然だろう。
 ハリーもフィオナの懐妊を喜んでくれた。これで両親を安心させられる、と。


(それにしても、ハリーは次、いつになったら帰ってくるかしら?)


 考えながら、フィオナの胸が少しだけ痛む。
 二年前からハリーは数日置きにしか家に帰ってこない。騎士であるため多忙なのは当然だが、彼が帰ってこないのは仕事が理由ではなかった。


(だけど、この子がそばにいてくれたら、わたしはそれで幸せだもの)


 フィオナは首を横に振りつつ、お腹に手を当て目を細める。


「馬車を用意してくれる? 買い物がしたいの」


 悩んでいる時間がもったいない。フィオナは使用人に馬車を用意させ、街へ出かけた。


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