【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

4.(END)

 それから数日後のこと。神殿にかつてないほどの緊張が走る。


「ついに本物の聖女が見つかったと聞いたのだが」


 現れたのはこの国のトップ――国王と王太子御一行だった。


(くそっ、いつの間にか陛下まで噂が届いていたのか)


 リアムがどれだけ報告を先延ばしにしていても、人の口に戸は立てられない。おそらくは参拝者経由でラブの噂が広まっていったのだろう。


「あ……あぁ……」


 ふと見れば、ステラが青白い顔をして震えていた。
 ラブが聖女に就任すると、他の聖女候補たちは不要となってしまう。神殿を出ればもう、ステラには両親から逃げるすべがない。……残念ながらタイムリミットが来てしまったのだ。


「それで? 本物の聖女はどこに?」

「ここです!」


 声をあげたのはラブだった。


(あんなに嫌がっていたのに……)


 さすがに王族に対してまで嘘はつけなかったのだろう。そう思いながらラブを見た途端、リアムは思わず目を見開いた。なんと、ラブが指しているのは自分自身ではなく、隣りにいるステラだったからだ。


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