【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

3.

 はじめて会った日以降、アシェルは頻繁にダニエルの部屋に顔を出すようになった。


「なにかかわりはないか?」

「まあ、アシェル様! ダニエル様はつい先程、寝返りに成功なさったんですよ! 首もしっかりと据わっていらっしゃいますし、そろそろ離乳食にチャレンジできそうなんです。目覚ましい成長でしょう?」


 赤ん坊にとっての一日はとても大きい。昨日できなかったことがいきなりできるようになったりするし、体もぐんぐん大きくなる。もったいなくて一秒たりとも目が離せないし、アシェルにも同じように思ってほしいとフィオナは願う。


(よかった。アシェル様もきっと、ダニエル様の愛らしさに気づいたのね)


 こんなふうに様子を見に来てくれることがとても嬉しい。フィオナはそっと目を細める。


「そうか。それは……よかったな、ダニエル」

「……う?」


 アシェルがぎこちなくダニエルを撫でる。が、ダニエルは不思議そうな表情でアシェルを見上げ、むっと唇を尖らせた。


(あらあら)

「なっ……私では不服か?」


 ショックを受けるアシェルがなんだかかわいくて、フィオナはふふっと口角を上げる。


< 14 / 158 >

この作品をシェア

pagetop