【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
(かわいい服。この布も。この子が生まれる時期は寒いから、毛糸も買っておいたほうがいいわよね)
数カ月後に会える我が子を思い浮かべながら、フィオナはそっと微笑んだ。着せてみたい服、一緒にやってみたいこと、行ってみたい場所がたくさんある。気が早いとわかっていても、それらを想像して準備をするのが心から楽しい。フィオナはもう一度、ゆっくりとお腹を撫でた。
「――やめてください」
と、前方で言い合いをしている男女が目に入る。どうやら女性の方が男性に言い寄られているようだ。女性は見るからに嫌がっているし、黙って通り過ぎるのは忍びない。
「あの……」
フィオナは意を決して男女に声を掛ける。男性はフィオナを見ると、チッと舌打ちをし、すぐにその場からいなくなった。
「助けてくださってありがとうございます! どうか、お礼をさせてください」
女性はそう言って、フィオナの両手をギュッと握る。
「え? そんな……わたしはなにもしていませんわ」
フィオナは本当に、少し声を掛けただけなのだ。お礼をしてもらうようなことは、何もしていないのだが。
「いいえ、それではわたくしの気が済みません。どうか、何かさせてください。……そうだわ、一緒にお茶などいかがでしょう?」
「え、お茶ですか? えぇと……そのぐらいなら」
どうしてもと言われては断りづらい。フィオナは女性についていった。
数カ月後に会える我が子を思い浮かべながら、フィオナはそっと微笑んだ。着せてみたい服、一緒にやってみたいこと、行ってみたい場所がたくさんある。気が早いとわかっていても、それらを想像して準備をするのが心から楽しい。フィオナはもう一度、ゆっくりとお腹を撫でた。
「――やめてください」
と、前方で言い合いをしている男女が目に入る。どうやら女性の方が男性に言い寄られているようだ。女性は見るからに嫌がっているし、黙って通り過ぎるのは忍びない。
「あの……」
フィオナは意を決して男女に声を掛ける。男性はフィオナを見ると、チッと舌打ちをし、すぐにその場からいなくなった。
「助けてくださってありがとうございます! どうか、お礼をさせてください」
女性はそう言って、フィオナの両手をギュッと握る。
「え? そんな……わたしはなにもしていませんわ」
フィオナは本当に、少し声を掛けただけなのだ。お礼をしてもらうようなことは、何もしていないのだが。
「いいえ、それではわたくしの気が済みません。どうか、何かさせてください。……そうだわ、一緒にお茶などいかがでしょう?」
「え、お茶ですか? えぇと……そのぐらいなら」
どうしてもと言われては断りづらい。フィオナは女性についていった。