【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

4.(END)

「綺麗だよ、フィオナ」


 アシェルは穴が空いてしまいそうなほどフィオナを見つめ、額や頬に口付ける。
 今夜は王室主催の夜会。国王に結婚の挨拶をするため、フィオナとアシェルは城を訪れていた。

 こんなふうに着飾るのは何年ぶりだろう? フィオナはアシェルにお礼を言うと、嬉しそうに目を細めた。


 夜会がはじまると、アシェルと一緒にたくさんの人と挨拶を交わす。公爵である彼の周りには、ひっきりなしに人が集まってきた。

 ハリーとも何度か夜会に出席したが、彼はまだ爵位を継いでいなかったし、社交界での顔も広くなかったので、あまりのギャップに驚いてしまう。


「疲れただろう? 飲み物をもらってくるから、少しだけ待っていて」

「ええ」


 アシェルを見送り、フィオナがひと息ついたときだ。


「フィオナ……?」


 と、誰かに気安く自分の名前を呼ばれた。ドクン、と心臓が嫌な音を立てて鳴り響く。振り返ると、元夫であるハリーがそこにいた。


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