【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
 あれから二年の月日が経った。


「おかあさま、こっちにきて!」


 フィオナの手を引き、ダニエルが笑う。

 アシェルとの結婚を機に、ふたりは自然と親子として接するようになった。元々我が子のようにダニエルを慈しんできたフィオナだったが、本当の親子になってからはより一層、溢れんばかりの愛情を注いでいる。それはダニエルの方も同様で、彼はフィオナを誰よりも愛し、心から慕っている。


「おとうさまも、こっち!」


 ダニエルがアシェルを呼ぶ。彼は微笑みながらふたりの元に急いだ。


「どうしたの、ダニエル?」

「あのね、さっき、赤ちゃんがぼくのことよんだんだ!」


 ダニエルが指差すのは、彼が以前使っていたベビーベッドで眠っている小さな赤ん坊だ。フィオナはダニエルの頭を撫でながら「まあ、本当?」と尋ねる。


「うん! お兄ちゃんって、きこえたんだよ!」


 そう言って満面の笑みを浮かべるダニエルに、フィオナとアシェルは目を細めた。


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