【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
 今から一年ほど前のこと、フィオナの妊娠が判明した。
 当然、フィオナとアシェルは驚いたし、心の底から喜んだ。


『だけど、どうして?』

『これは私の推測だけど……フィオナに不妊を宣告した医師は、キャサリンに金で雇われた人間で、ハリーとフィオナの離婚を確実に成立させるために嘘の診断をくだしたんだと思う』

『それじゃあ……』


 フィオナの瞳に涙が滲む。ぺたんこのお腹を撫でながら、嬉しさが込み上げてきた。



「ねえ、おかあさま! おかあさまはぼくのこと好き?」

「ええ、もちろん」


 フィオナがダニエルを抱きしめる。自分の子供が生まれても、ダニエルへの愛情はちっとも変わらない。むしろ、毎日どんどん増え続けている。


「あなたのおかげで今、わたしは幸せです」


 アシェルとダニエルを見つめながら、フィオナは満面の笑みを浮かべるのだった。
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