【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

2.

 その日から、アデリナは少しずつヘラーに心を開いていった。


「アデリナ、今日はどんな一日だった?」

「今日は……イネス様と一緒に王太子妃殿下のお茶会に行ってまいりました。殿下はとても美しい人で……」


 結婚当初ならば『別に』で済ませていたその日の出来事を、自分の口で説明をするようになる。


「それはよかった。楽しかった?」


 ヘラーは何の変哲もないアデリナの日常をとても楽しそうに聞いてくれた。どんなことを話してもニコニコと笑ってくれるから『こんなことを言ってもいいのだろうか?』と思い悩む必要はない。


「ええ、とても」


 そうしているうちに、義務感しか抱いていなかった社交も、使用人たちとの会話も、花が咲いたという程度のささいな出来事すらも楽しいことのように感じられてきて、アデリナはふわりと目を細める。アデリナが微笑むたびに、ヘラーもまた嬉しそうに笑った。


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