【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「……はい。私もヘラー様と一緒にいたいです。ずっと、あなたの側にいたい。あんな約束、なくしてしまいたい」


 それは、ようやく口にできたアデリナの本音だった。
 ヘラーは穏やかに微笑むと「うん」と力強く返事をする。


「それにしても、どうしてここがわかったのですか?」


 アデリナが尋ねる。誰にも行き先は告げなかったし、書き置きでも匂わせるようなことはしていない。きっと見つかることはないだろうと思っていたのに。


「え? だって、アデリナは以前『またここに来たい』って言ってくれていただろう? だから、絶対ここに違いないって思ったんだ」


 さも当然と言った表情で胸を張るヘラーにアデリナは目を丸くし、たまらず笑い声を上げる。


「ヘラー様、私、あなたのことが大好きです」

「うん! 知ってるよ」


 ヘラーはそう言うと、アデリナを思い切り抱きしめたのだった。
< 56 / 200 >

この作品をシェア

pagetop