【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「その昔、私の母はあなたのお父様の妃候補でした」
「知っている。母から何度も聞かされた」
ため息をつきつつユリウス様が言う。
「相当気が強く、それでいて優秀な女性だったらしい。妃選びの際に最後の最後まで母と競り合っていたと」
「そうです。そして、私の母はあなたのお母様に負けました。けれど、母は愚かにも『自分は妃になるために生きてきた』と本気で信じていたんですよ」
「……らしいな。母との婚約が決まったあとも、何度もアプローチをかけられたと父から聞き及んでいる」
……あっ、本当にそこまでやっていたのか。さすがにそれは知らなかった。
我が母ながら恥ずかしい人。ユリウス様の言葉を聞きながら、思わず嘲笑がもれてしまう。
「まあ、それでも妃になることは叶わなかったもので、母は目標をすげ変えたんです。『娘の私を絶対に王太子の妃にする』ってね」
「知っている。母から何度も聞かされた」
ため息をつきつつユリウス様が言う。
「相当気が強く、それでいて優秀な女性だったらしい。妃選びの際に最後の最後まで母と競り合っていたと」
「そうです。そして、私の母はあなたのお母様に負けました。けれど、母は愚かにも『自分は妃になるために生きてきた』と本気で信じていたんですよ」
「……らしいな。母との婚約が決まったあとも、何度もアプローチをかけられたと父から聞き及んでいる」
……あっ、本当にそこまでやっていたのか。さすがにそれは知らなかった。
我が母ながら恥ずかしい人。ユリウス様の言葉を聞きながら、思わず嘲笑がもれてしまう。
「まあ、それでも妃になることは叶わなかったもので、母は目標をすげ変えたんです。『娘の私を絶対に王太子の妃にする』ってね」