【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

3.

 その日から、私はナターシャ様を鍛えまくった。
 次のお題が発表されるたびに、どちらかの部屋で勉強会を開き、傾向と対策を叩き込む。

 正直、どのお題も母の予想の範囲を超えないため、教えるのはとても簡単だった。ポイントさえ押さえてしまえばある程度の評価は絶対にもらえる。あとは本人がこれまでに培ってきた教養や経験、考え方の問題だけれど、ナターシャ様は素直で明るく真面目だし、とても妃向きの人物だ。よほどのことがない限り、マイナス評価を付けられることはないだろう。


 このままならいける。


 ……なんて考えていたのも束の間、勉強会の参加者はナターシャ様一人ではなくなっていた。
 一人増え、二人増え、結局三日後には候補者の全員が参加していて、私は驚いてしまった。これではなんの意味もない。みんながみんな同じ知識を披露したところで、評価は全員横並びだ。


(正直私は、誰か一人が候補者として飛び出てくれたほうがありがたいんだけど)


 そのほうが私が選ばれる確率が下がる気がするし。まあ、全体の評価が上がれば、私の評価は必然的に下がるのだから、結果は同じだと思うけど。


 勉強会の終わりには、みんなでお菓子を持ち寄ってお茶会を開くのが定番になっていた。


(こんなに馴れ合っていていいんだろうか?)


 母たちのときはもっとギスギスしていたらしい。会話なんて皆無に等しく、ことあるごとににらみ合っていたと。助け合うなんてもってのほかで、互いに足を引っ張り合っていたとも聞いている。重要な儀式の前には毒を盛りあったなんて逸話もあるぐらいだ。


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