【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

4.(END)

 そうして、あっという間にひと月が経ち、儀式は終りのときを迎える。
 広間には私たち妃候補が十人と、その親族たちが集まっていた。


「久しぶりね、クラウディア」

「お母様」


 母は興奮した面持ちだった。自分の念願が成就されることを信じて疑っていないらしい。


(違うのに――)


 私がユリウス様に選ばれることはないのに。

 以前の私だったら、とても幸せな気持ちで今日この日を迎えただろう。母に仕返しができることを、心の底から喜んだだろう。

 けれど今、私は複雑な心境だ。


「静粛に」


 広間にユリウス様と国王陛下、それから王妃様――ユリウス様のお母様が現れる。母は陛下のことを穴が空くんじゃないかというほどに熱く見つめていた。


(なりたかったのは『妃』なのか『陛下の妻』なのか……一体どちらだったんだろう?)


 実際のところはわからない。聞きたいとも思わない。……ただ、やはり腹立たしいと思ってしまう。


「これより儀式の結果を発表する。儀において、最上位についた令嬢は――」


 母の視線を感じつつ、私は静かに目をつぶる。心臓がトクントクンと小さく鳴る。


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