【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

1.

 今から十七年前、シャズリーヌ王国に降臨した神はこう言った。


『今年生まれる女性に神の力を授けたよ』


 それはつまり、聖女の誕生を意味していた。
 しかし、神はそれ以上の情報は与えず、彼女を探すようにとだけ言い置き、天界へと戻ってしまった。

 以後、シャズリーヌ王国は聖女を見つけようと躍起になっている。


***


「聖女、ねぇ」


 本当にそんな女性がいるのだろうか? ――神殿に集められた女性を見回しながら、聖騎士リアムはため息をつく。
 十六歳のときから六年間、聖女候補たちを間近で見ているが、誰も特別な力を持っているようには思えない。

 ……というのも、気まぐれな神が『誰が聖女なのか』明言することも、印をつけることもしなかったためで、少しでも奇跡に近い力を見せた女性はみな聖女候補とみなされ、神殿に集められているからだ。

 聖女候補たちは一定期間、聖騎士たちが見守る中、聖女としての素養や力を確認される。そして、間違いなく聖女ではないと判断された女性は元の生活に戻る決まりになっていた。


< 83 / 158 >

この作品をシェア

pagetop