【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
「リアム、今日からはこちらの女性――ラブ様につくように」
この日長官が連れてきたのは、ラブという小柄な女性だった。茶色の髪に茶色の瞳、可愛らしい顔立ちではあるが、宝石や花にたとえられるほどではない。どこにでもいる、至って普通の女性に見えた。
「承知しました」
どうせ彼女も聖女ではない。リアムはそう言って長官に向かって頭を下げる。
「リアム様、とおっしゃるのですね」
ラブはそう言って、リアムの顔をじっとのぞき込む。――なるほど、早速取り入ろうとしているのだろう。
聖女候補はいつもこうだ。聖騎士たちが自分の命運を握っていることを知っていて、なんとかして気に入られようと躍起になる。聖女と認定されれば、国から莫大なお金が支給されるし、確固たる地位を得ることができる。王族との婚姻だって可能だし、女性としての栄華を極められるといっても過言ではない。だからこそ、ちょっとした『奇跡』が起きるだけで、いろんな女性が神殿にやってくるのだが……。
「あの、最初に謝っておきます! わたし、聖女じゃないんです!」
「……は?」
しかし、ラブが口にしたのは思いがけないことだった。リアムは首をひねりつつ、ラブのことを見つめ返す。
この日長官が連れてきたのは、ラブという小柄な女性だった。茶色の髪に茶色の瞳、可愛らしい顔立ちではあるが、宝石や花にたとえられるほどではない。どこにでもいる、至って普通の女性に見えた。
「承知しました」
どうせ彼女も聖女ではない。リアムはそう言って長官に向かって頭を下げる。
「リアム様、とおっしゃるのですね」
ラブはそう言って、リアムの顔をじっとのぞき込む。――なるほど、早速取り入ろうとしているのだろう。
聖女候補はいつもこうだ。聖騎士たちが自分の命運を握っていることを知っていて、なんとかして気に入られようと躍起になる。聖女と認定されれば、国から莫大なお金が支給されるし、確固たる地位を得ることができる。王族との婚姻だって可能だし、女性としての栄華を極められるといっても過言ではない。だからこそ、ちょっとした『奇跡』が起きるだけで、いろんな女性が神殿にやってくるのだが……。
「あの、最初に謝っておきます! わたし、聖女じゃないんです!」
「……は?」
しかし、ラブが口にしたのは思いがけないことだった。リアムは首をひねりつつ、ラブのことを見つめ返す。