【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

2.

「ラブ様の言うことって、本当によく当たるのよね……」


 それはラブが神殿に来てから一週間後のこと。参拝客がそんなことを噂するのをリアムは耳にした。

 聖女候補たちは毎日神殿に立ち、人々の祈りごとや悩みを聞く。それは『聖女たるもの高潔たるべし』という国の考えによるものなのだが、平民出身のラブは高潔――とは言い難い、友人の悩みを聞くような和やかな雰囲気で、参拝客たちの話を聞いている――というか、おしゃべりを楽しんでいた。


「よく当たる、とは?」


 リアムが参拝客にたずねると、彼女はキョトンと目を丸くしてほほえんだ。


「それがね、ラブ様に『旦那の仕事が上手くいってない』って相談したの。そうしたら『隣町に行ってみるといいことがありそう』なんて言われて。半信半疑で行かせてみたんだけど、すごくいい縁があったのよ」


 参拝客の返答に、リアムはうーんと首をひねる。


(たまたま、だよな?)


 そう思うものの、証言者が一人や二人じゃないからたちが悪い。
 しかし、ラブ自身にたずねてみても『たまたまですよ』と返されるに決まっている。参拝客の話を聞くラブを見つめつつ、リアムは唇を尖らせた。




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