【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです
 それから数日後、リアムはラブを連れて、とある土地を訪れていた。そこでは数ヶ月前から干ばつが続き、飲水の確保すら難しくなっているそうで、聖女候補たちをたびたび派遣している。しかし、それでも雨が降ることはなく、人々は困り果てていたのだが――。


「――雨、ですね」

「本当ですねぇ! よかったよかった」


 ふたりが降り立った瞬間、雨がザーザーと降り注いだ。住人たちは大喜びで外へ飛び出し、嬉しそうに空を見上げている。


「傘、持ってくればよかったですねぇ」

「……そうですね」


 ラブとともにびしょ濡れになりながら、リアムは唇を引き結ぶ。


「ラブ様、もしかして以前にも似たようなことがありました?」

「まさかぁ! たまたまですよ、たまたま」


 ニカッと満面の笑みを浮かべつつ、ラブはリアムに寄りかかる。


(間違いない。以前にもあったんだな)


 おそらくはそれが、彼女が聖女として担ぎ出された理由なのだろう。リアムはまじまじとラブを見つめる。


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