【短編集】あなたのおかげで今、わたしは幸せです

3.

 その日以降、ステラはなにかとラブに突っかかってくることが多くなった。どうやらライバル視をされているらしい。


「いやですねぇ、わたしは本当に聖女じゃありませんのに」

「そうよ、そうよ! わたくしが真の聖女だもの!」


 ふたりのやりとりを見守りながら、リアムはなんとも言えない気分になってしまう。


(聖女なのに『自分は聖女じゃない』と頑なに主張するラブ様と、聖女じゃないのに『自分は聖女だ』と言い張るステラ様って……)


 とはいえ、証拠と呼べるものがない以上、どちらの主張もまかりとおる。神様もまどろっこしいことをしてくれたものだと、リアムはこっそりため息をついた。


「わたし、ステラ様を応援します!」

「応援? そんなもの、しなくて結構よ! だって、わたくしが聖女だもの」


 フン、と鼻を鳴らして去っていくステラの姿はもはや神殿の名物と化している。やれやれとつぶやくリアムに、ラブはふふ、とほほえんだ。


「ステラ様みたいな人が聖女なら、この国も安泰ですね」

「そうでしょうか? やる気があるのは結構ですが、見ていて危なっかしい感じもしますよ」

「でもでも、ステラ様って参拝客にすっごく優しいんですよ! あの姿はまさしく聖女って感じがしますし、彼女に救われた人ってたくさんいるんじゃないかなぁって思うんです」


 ラブは心の底からそう思っているらしく、瞳をキラキラと輝かせている。


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