泡沫の恋
「…お断りだよ、ばぁか」


もう、この社会からは出る。

まともに高校にも出てない俺が生きていけるのかは知らないけど。

終わった後にふと思い出したのは星羅の事だった。

抱いている時も何かを察しているように涙を流していた。

そしてさっき会った時も泣きそうな顔して「いってらっしゃい」って。

本当やりきれなくなる。

今考えても馬鹿らしいけど、ただの先輩後輩として会えてたら…。

高校2年だった時の俺と、中学3年だった時の星羅。

あのままずっと変わらずいられたら、きっと…。


「…君ほんまに足洗うつもりなん?」

「そう言ったろ、二言はねぇよ。」

「ほんなら星羅ちゃん連れて遠い場所に逃げれば?」

「馬鹿か、そんなんしたら殺されるわ。てか、まともに生きていけるか分かんねぇ俺と一緒に連れてきてもだろ。星羅も路頭に迷わすわけにはいかないんだよ」

「…変な所まともなんやな」


深見の言葉に少し笑って煙草の火を消すと、そのまま入口に向かって歩く。

別れの言葉とかそんなのいらない。

何も言葉を掛けないままその場を離れる。

そしてそのまま俺は組に戻る事は無かった。

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