泡沫の恋
洗面所に向かって朔夜から受け取った服に着替えるとブカブカだった。

あの頃と何も変わらない朔夜の香りに少し安心してしまった。

包まれているような、そんな気になって。

鏡を見ると私の顔はかなり赤く染まっていた。

け、化粧大丈夫…?落ちてない?

下着は…、上下揃ってるし。大丈夫…って、何が!?

1人ツッコミを繰り返して鏡の前で深呼吸をする。

今日朔夜に会えるって知ってたらもっとちゃんとしてたのに。

どうしてこんな急に…。

なんて思っても神様なんて存在が教えてくれるわけはない。

リビングに戻ると、朔夜はコーヒーが入ったマグカップを2つ持ってテーブルに置いてくれていた。

ソファーに座ると、何だか緊張でおかしくなりそう。


「何か、安心したわ」

「…何が」

「星羅が何も変わってなくて。男慣れもしてないみたいだし…。何で、誰とも付き合わなかったの?」


そう言って私に少し距離を詰めてくる。

ほんの少し近い朔夜の胸を掌で押してそれ以上近付かない様にする。

これ以上は緊張でどうにかなってしまう。


「そんなの…、好きだから以外ある?」

「へぇ、誰を?」

「…この人」


朔夜を指さして顔を背けると、強引に顔を向けさせられて唇をキスで塞がれる。

久しぶりだからか随分朔夜も余裕は無さそうで、こんなに求められるようなキスにまた息が上手くできなくなる。
< 115 / 117 >

この作品をシェア

pagetop