泡沫の恋
意識
あれから数日後、私は朔夜に選んでもらった服を着て髪を巻いている。

本当に変じゃない?今日の私。

普段は全然着ない服装に自分でも違和感が止まらない。

用意を済ませて廊下に出るとたまたまお父さんと鉢合わせる。


「…お父さんか。おはよ」

「おはよ、星羅。どこかに出かけるのかい?」

「うん、深見さんと出掛けてくるね」

「上手くいってるなら何より。」


お父さんの笑顔を見るなり、私のこの決断は毎度間違っていないと感じる。

だけど、その後ろに控えてる朔夜の顔を見るとこれでよかったのかってぶれてしまうのは何でなんだろう。

朔夜は私の恰好を見ても何も言わない。


「今日は護衛無しの日って事かな。」

「ああ、他の事今日はやる。」

「珍しい。こういう時朔夜なら遊びに行くんじゃないのかい?」

「そんな気分じゃねぇんだよ。てか普段のガキのお守りのせいでやる事山積みだっつーの」

「ご苦労様」


お父さんと朔夜の会話を聞きながら、私はその横を通り過ぎる。

朔夜の横を通り際、腕を掴まれて吃驚して朔夜の顔を見ると「何かあったら連絡しろよ」と力強い瞳で捉えて言ってくる。

護衛、無しの日なんじゃないの。

今、お守りなんてって言い方してたじゃん。


「…大丈夫だよ。深見さんもいるし」

「もしもの時はだよ。それ以外は絶対連絡してくんな」

「うざすぎ」


そんな風に会話をして笑うと朔夜は腕を離す。

変な朔夜。
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