泡沫の恋
────Side 朔夜


「お守りのせいでなんて言いながら随分肩入れしてるんだね」

「また厄介な事が起きたら面倒なだけだよ。」


そんなことを話しながら組長の部屋に向かって歩いていた時だった。

ここ最近の星羅の周りでの動きに関しての報告を求められたからその途中だったけどさっき星羅が別の奴に守られるって思った時ふと不安になった。

今まで自分が近くで見てきたから安心だっただけで。

何も起こらないとは限らない。

星羅の近くに居る時だけはデートなんて浮かれた事言ってられない。


「…本当に佐原の所に嫁がせるつもり?同盟なんて無くてもここは安泰だろ。てか、他にやる方が危ないとか思わねぇの。娘を人質に脅されたりして。」

「そうだとしても星羅はもう向こうに嫁いだらうちとは縁が切れるからね。」

「実の娘なのにえらい冷たいんだな。」

「そういう世界だろ?」


本当組長のこういうところ何考えてるか分からない。

娘を溺愛してるかと思いきや、急に首を切るかのように。

俺も使えないと判断されたら一瞬で…。

拾われた時の冷たい視線、まだ覚えてる。

この人には逆らえないって思わされた時の事。


「…もし星羅をそんな切り方するなら俺は星羅に着いて行くよ」


俺の発言にようやく組長が振り返った。
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