泡沫の恋
思惑
中学3年の時だった。

我が家にボロボロの学生服を着た朔夜が我が家にやってきた。

お父さんは朔夜の肩を抱きながら、私に紹介をする。


「この子は京極 朔夜くん。今日から星羅の家庭教師をやってもらうと思って。」

「…朔夜くん?」


その時の朔夜は全く目に光も無くて力のない瞳でこちらを見るだけ。


「朔夜くん、先話したうちの娘の星羅。年齢も近いし仲良くしてあげてくれるかな」

「…はい。」


そう言葉を漏らすと、朔夜は私に近付いてきた。


「朔夜です。よろしく、星羅お嬢様」


なんてまるでお姫様に接するみたいに呼んでくれて手を差し出してきた。

私もその手を握って握手を交わす。

それから身なりを整えると、朔夜はその夜から受験生の私の家庭教師になった。
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