泡沫の恋
日も暮れてやることを済ませ、月が輝く時間帯。

廊下を歩いていると縁側に朔夜が座って月を眺めていた。

何となく気まずくて声を掛けるか悩んでいると、朔夜が私の存在に気付く。


「何してんの」

「お風呂上り、朔夜は?」

「チルタイム中」

「なんなのそれ」


今時の言葉を使う朔夜に少し笑って、隣に並んで座る。

煙草の火を消して変わらず廊下に手を付いて月を見ている。

その横顔が格好良くてずっとみていると、朔夜の視線がこちらに向く。


「何」

「…何でもない」


そう答えて慌てて目線を逸らす。

好きな人と意識するだけで目が合うだけでもときめいて胸が締め付けられてしまう。

中学生のあの時みたいに。

久しぶりに恋をして、こんなのどうしたらいいか分からない。
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