泡沫の恋
過ち
────Side 朔夜


「もしもし、上手く逃げ切れたみてぇじゃん」

『まさかサツ呼んでたとか、そんなサプライズ待ち受けてるなんて思わんかったわぁ。意外と狡いんやね。』

「お前に言われたくねぇけどな」


電話していた相手は深見だった。

こいつを捕らえられなかったというのは連絡が来ていた。

この男を野放しにしたままじゃ、安心して組を抜けることも星羅を置いて行くことも出来ない。

俺が組を抜けると決めた理由は単純に、元々俺が拾われた時の恩は返したから。

ずっと長くここに居るつもりなんて無かった。

今から俺が一般人に混ざって生活なんて笑えるような状況かもしれないけど、だけどずっとこの世界にいる覚悟は俺にはなかったから。

組長は俺に後ろめたい感情があるからか、引き留めては来なかった。

俺の最後の仕事は深見を潰して終わる。

組としてというより個人的にこの男だけは潰しておかなきゃいけない。

星羅を傷付けたこの男を。
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