シンデレラ・プロジェクト~魔法のワンピースと体重計の精霊~
不思議なお店
わたし、西門まりあ、中学二年生。わたし、宣言します。
初恋の幼馴染、大川祐樹君に好きだと告白することを!
意気込んでみたところで、わたしに勝ち目がある戦いではない。
図書委員、普通顔、運動は苦手。クラスでは目立たない存在のわたし。
幼稚園から憧れ続けている祐樹君は、勉強もスポーツも出来て、おまけに優しい。そんな人が振り向いてくれるわけないとは、わたしも分かっているの。
幼稚園からの幼馴染の祐樹君。小学校低学年くらいまでは、仲が良かったの。家も近所だったし、小学一年生の時は、同じクラスだったし、お母さん同士も知り合いだったし。
でも、小学校の高学年になってからは、イケメンの祐樹君には、いつでも取り巻きの女の子達がいた。それに、インドア派で本ばかり読んでいるわたしと違って、活発でスポーツが大好きな祐樹君は、人気者だったから、わたしとの接点は、どんどん無くなっていった。
同じ中学に通っているといっても、全く話をする機会すらないのだ。
でも、わたし、決めたの。
自分の人生を変えるって。
ここで一歩踏み出すことで、今までの弱気な自分を変えるの。例え、玉砕すると分かっていても。
と……決心してみたものの……。やっぱり何度も決心は揺らぎ、何もできずに今にいたる。だって、やっぱり怖いじゃない。好きな人に「嫌い」なんて言われたらどうしようなんて、つい悪い想像ばかりしてしまう。
優しい祐樹君のことだから、馬鹿にしたりはしないだろうけれども、それでも、どんな言葉が返って来るのか、想像しただけで恐ろしい。
きっと、祐樹君の困った顔一つでわたし、耐えられない。
やっぱり、こんなわたしには、告白なんて大それたことは無理なんだろうか。
どうしようかと悩んでいたわたし。考えごとをしながら歩いていたのが、きっとよくなかったのよね。
休日に本を買おうと街を歩いている時に、迷子になった。
中学生にもなって、よく歩く道。この条件でどこに迷子になる要素があったというのよ、わたし。
自分のポンコツぶりに、ほんと嫌になる。
「え、ここ、どこなの?」
何度も行ったことのある本屋に行こうとしただけなのに、道が分からない。
歩けばドンドン人通りもなくなって、私は心細くなる。
スマートフォンを見れば、圏外。
こういう時に役立ってほしいのに、役立たずだ。
太陽は、西の方へと傾いて、あんなに爽やかな青空が広がっていたというのに、今は、空が真っ赤に染まっている。
このままでは、夜になってしまう。
わたしは焦る。
どこかで道を尋ねられないかとキョロキョロと辺りを見回す。
ふいに、袋小路の奥にポツンと一軒の店が立っていることに気づく。
「そうだ。あのお店で道を聞いてみよう」
私は、店の扉を開けた。
小さな店内には、雑貨や洋服、色んな物が所せましとならんでいた。
わたしが一番先に目についたのは、一枚のワンピースだった。
「うわ、可愛い!」
店の中央には、飾られていたワンピースに、目が釘付けとなる。
水色の生地のシンプルなデザインだけれども、細かなフリルがポイントになっていたり、すっごく惹かれる。
ブランドのタグを見る。
『VIVIDE BAVID』と全く知らないブランドのロゴが入っている。値段は……丁度、今日本を買おうかと思って持って来たお金と同じ。
どうしよう。
でも、本当に素敵なの。これって、運命の出会いじゃない?
「いいでしょ。それ」
迷っていると、奥から店員さんらしい女の人が出てきた。
お母さんと同じくらいの年に見える女性は、にっこりと笑いながら、商品を進めてくる。
「それね。シンデレラが舞踏会に行った時に使ったのと同じ生地を使っているのよ」
なんだか、一気に怪しくなってきた。
シンデレラって、思い切り架空の人物だ。
「え……。シンデレラと?」
「そうよ。舞踏会で王子様のハートを射止めた時に来ていたドレスと同じ魔法を使った生地なの! もう、これは恋愛成就まっしぐらで半端ない自慢の品よ!」
どや顔する店員。
シンデレラの物語に、恋愛成就のご利益を求めるのは、なんだか和洋折衷で世界観おかしい気がするのだが、でも、気になる。
架空のお話であるシンデレラのドレスと同じ生地を使っていると言われて、この科学が進んだ現代社会で、誰が信頼するというのだろう。いや、誰もしないでしょ?
わたしだって、信頼しない。すっごい、詐欺の予感がする。
でも、迷う。
だって、店員さんの説明は、怪しいけれど、ワンピースは素敵なのだ。
どうしよう。う~。決められない。
「さ、サービスするから! ね? ほら、頑張って作ったの! 告白が絶対上手くいく魔法をかけた、縁起ものよ!」
「告白がうまくいく?」
「そうそう! シンデレラ知っているでしょ?」
シンデレラは知っている。
虐げられた少女が、素敵な王子様に見初められて結婚して幸せになる王道ラブストーリーのおとぎ話だ。
もう一度、わたしは、値札を見る。欲しかった本、二冊分の値段。ワンピの値段としては、お買い得かも……。
「でも……好きな人に告白する決心をした人には、うってつけの商品よ?」
「え? どうしてそれを?」
わたし、初めて会ったこの店員に、恋愛相談なんてした記憶はないんだけれど。どうして、わたしが、好きな人に告白しようって思っているって、知っているの?
「な、なんとなくよ~。そんな顔してるもの~」
「そんな顔……?」
そんな告白を決心した顔をしていただろうか? うわ、はずい。そんなに分かりやすく顔に出ていた?
とても怪しい店員は、気になるけれども。確かに、わたしには、うってつけのワンピなのよ。うーん……。
……よし。決めた。買おう。
わたしは、決心する。
初恋の幼馴染、大川祐樹君に好きだと告白することを!
意気込んでみたところで、わたしに勝ち目がある戦いではない。
図書委員、普通顔、運動は苦手。クラスでは目立たない存在のわたし。
幼稚園から憧れ続けている祐樹君は、勉強もスポーツも出来て、おまけに優しい。そんな人が振り向いてくれるわけないとは、わたしも分かっているの。
幼稚園からの幼馴染の祐樹君。小学校低学年くらいまでは、仲が良かったの。家も近所だったし、小学一年生の時は、同じクラスだったし、お母さん同士も知り合いだったし。
でも、小学校の高学年になってからは、イケメンの祐樹君には、いつでも取り巻きの女の子達がいた。それに、インドア派で本ばかり読んでいるわたしと違って、活発でスポーツが大好きな祐樹君は、人気者だったから、わたしとの接点は、どんどん無くなっていった。
同じ中学に通っているといっても、全く話をする機会すらないのだ。
でも、わたし、決めたの。
自分の人生を変えるって。
ここで一歩踏み出すことで、今までの弱気な自分を変えるの。例え、玉砕すると分かっていても。
と……決心してみたものの……。やっぱり何度も決心は揺らぎ、何もできずに今にいたる。だって、やっぱり怖いじゃない。好きな人に「嫌い」なんて言われたらどうしようなんて、つい悪い想像ばかりしてしまう。
優しい祐樹君のことだから、馬鹿にしたりはしないだろうけれども、それでも、どんな言葉が返って来るのか、想像しただけで恐ろしい。
きっと、祐樹君の困った顔一つでわたし、耐えられない。
やっぱり、こんなわたしには、告白なんて大それたことは無理なんだろうか。
どうしようかと悩んでいたわたし。考えごとをしながら歩いていたのが、きっとよくなかったのよね。
休日に本を買おうと街を歩いている時に、迷子になった。
中学生にもなって、よく歩く道。この条件でどこに迷子になる要素があったというのよ、わたし。
自分のポンコツぶりに、ほんと嫌になる。
「え、ここ、どこなの?」
何度も行ったことのある本屋に行こうとしただけなのに、道が分からない。
歩けばドンドン人通りもなくなって、私は心細くなる。
スマートフォンを見れば、圏外。
こういう時に役立ってほしいのに、役立たずだ。
太陽は、西の方へと傾いて、あんなに爽やかな青空が広がっていたというのに、今は、空が真っ赤に染まっている。
このままでは、夜になってしまう。
わたしは焦る。
どこかで道を尋ねられないかとキョロキョロと辺りを見回す。
ふいに、袋小路の奥にポツンと一軒の店が立っていることに気づく。
「そうだ。あのお店で道を聞いてみよう」
私は、店の扉を開けた。
小さな店内には、雑貨や洋服、色んな物が所せましとならんでいた。
わたしが一番先に目についたのは、一枚のワンピースだった。
「うわ、可愛い!」
店の中央には、飾られていたワンピースに、目が釘付けとなる。
水色の生地のシンプルなデザインだけれども、細かなフリルがポイントになっていたり、すっごく惹かれる。
ブランドのタグを見る。
『VIVIDE BAVID』と全く知らないブランドのロゴが入っている。値段は……丁度、今日本を買おうかと思って持って来たお金と同じ。
どうしよう。
でも、本当に素敵なの。これって、運命の出会いじゃない?
「いいでしょ。それ」
迷っていると、奥から店員さんらしい女の人が出てきた。
お母さんと同じくらいの年に見える女性は、にっこりと笑いながら、商品を進めてくる。
「それね。シンデレラが舞踏会に行った時に使ったのと同じ生地を使っているのよ」
なんだか、一気に怪しくなってきた。
シンデレラって、思い切り架空の人物だ。
「え……。シンデレラと?」
「そうよ。舞踏会で王子様のハートを射止めた時に来ていたドレスと同じ魔法を使った生地なの! もう、これは恋愛成就まっしぐらで半端ない自慢の品よ!」
どや顔する店員。
シンデレラの物語に、恋愛成就のご利益を求めるのは、なんだか和洋折衷で世界観おかしい気がするのだが、でも、気になる。
架空のお話であるシンデレラのドレスと同じ生地を使っていると言われて、この科学が進んだ現代社会で、誰が信頼するというのだろう。いや、誰もしないでしょ?
わたしだって、信頼しない。すっごい、詐欺の予感がする。
でも、迷う。
だって、店員さんの説明は、怪しいけれど、ワンピースは素敵なのだ。
どうしよう。う~。決められない。
「さ、サービスするから! ね? ほら、頑張って作ったの! 告白が絶対上手くいく魔法をかけた、縁起ものよ!」
「告白がうまくいく?」
「そうそう! シンデレラ知っているでしょ?」
シンデレラは知っている。
虐げられた少女が、素敵な王子様に見初められて結婚して幸せになる王道ラブストーリーのおとぎ話だ。
もう一度、わたしは、値札を見る。欲しかった本、二冊分の値段。ワンピの値段としては、お買い得かも……。
「でも……好きな人に告白する決心をした人には、うってつけの商品よ?」
「え? どうしてそれを?」
わたし、初めて会ったこの店員に、恋愛相談なんてした記憶はないんだけれど。どうして、わたしが、好きな人に告白しようって思っているって、知っているの?
「な、なんとなくよ~。そんな顔してるもの~」
「そんな顔……?」
そんな告白を決心した顔をしていただろうか? うわ、はずい。そんなに分かりやすく顔に出ていた?
とても怪しい店員は、気になるけれども。確かに、わたしには、うってつけのワンピなのよ。うーん……。
……よし。決めた。買おう。
わたしは、決心する。