シンデレラ・プロジェクト~魔法のワンピースと体重計の精霊~
 まりあが寝ている内に異変があった。
 夜中、まりあが寝ている間に、まりあの部屋に来訪者があったのだ。

 「従者よ。うまくいっているかい?」

 開いてもいない窓をすり抜けて部屋に入って来たのは、あのワンピースを売った女性店員だった。
 あの日、ワンピースを売ったときとは違い今日は、真っ黒なローブに身を包んでいる。

 ケイは、ハムスターから人間の素敵に戻り、魔女を睨む。

 「まりあは、頑張っているよ」


 魔女から庇うように、ベッドで眠るまりあの前に、ケイは立つ。
 何かあったときには、まりあに危害が加えられないように、魔女のからまりあを庇う。

 「ふうん。報告に来ないと思ったら、なんだいその態度は」
 「お前には関係ない!」

 ケイが魔女を睨んでも、魔女は全く動じない。

 「分かっているのかい? 期限は、一ヶ月」
 「ああ。そんなの当たり前だろう?」
 「一ヶ月の期限を過ぎれば……」
 「分かっているって言っているだろ! 俺が絶対に成功させる! だから、消えろよ!」

 魔女は余裕の笑みで、ケイを見下げる。
 ケイは、魔女を睨み返し、警戒する。

 「わたしにそんな口を聞くなんてね。ずいぶん偉くなったものだな」
 「うるさいな。あっちに行けよ!」

 魔女は、じっとケイを見つめる。
 そして、ああ……と、何かに気づいて、魔女の目が光る。

 「そうか……どうもおかしいと思ったら、お前、名前をもらったのか」
 「なんだよ! だったらどうだっていうんだ」
 「通りで私の言葉を聞かない。魔法の呪縛が緩んでいるね」

 魔女の魔法の力がゆっくりと広がって、ケイの首を締め上げる。

 「は、放せ!」

 宙ぶらりんになったケイは苦しくてもがく。ケイの中に魔女が魔法を侵入させようとしてくるが、ケイが抵抗してうまくいかない。

 「……案外、絆が強まっているようだね。魔法が浸透しない。……まあいい。どうせこの娘では上手くいかないだろう」

 魔女が魔法を緩めたのか、ケイの体はどさりと床に落とされた。
 ケイは、締められた喉が苦しくてケホケホと咳をするが、それでもまりあを庇おうと、魔女の前に立ち塞がる。
 そんなケイの様子に、フンッと、少し不満そうな様子で魔女は鼻を鳴らす。

 「一ヶ月後を楽しみにしているよ」

 ふふふっと笑いながら、魔女は去っていた。
 魔女が去った後、静かに眠るまりあの髪を、ケイは、優しく撫でる。
 これも魔女の魔法なのか、それともいつもよりも運動したからなのか、まりあは少しも目を覚まさない。

 「俺の主人。俺は、絶対にお前を守るから」

 ケイは、優しい目で、まりあの寝顔を見つめていた。
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