トロイメライな世界の中で。〜君と過ごした29日間〜

悲しきすべて

紬のおじいさんに話を聞き終わった後、僕は急いで紬のお家に帰ってきた。




息を切らした僕に、心配した顔を浮かべるとソファまで移動するのを手伝ってくれた。




「紬。大事な話がある」




僕が神妙な面持ちを浮かべていたからかわからないが、紬は頷き私も、と言った。




紬がホットミルクを用意し、向かい合って席に座った。




「単刀直入に言う。君は、天使でしょ?」




僕がそう言うと、驚いた顔を一瞬浮かべ、深呼吸をした。




「うん、そうだよ・・・・」




自分で聞いたにも関わらず、僕は驚いた。




「ねぇ、紬。これが、真実なんだよね?」




それは、僕達が遭った事故から始まった。





あの日、僕らは一緒に登校していた。




そして、脇見運転の車が僕らに突っ込んできた。




僕は、紬を突き飛ばす。




いや、違う。




紬が、僕を突き飛ばした代わりに事故にあったんだ。




そして、突き飛ばされた衝撃で僕は頭を打ち意識を失ってしまう。




この事故で、紬が犠牲になってしまった。




紬は、目を開けるとただ白い世界にいたそうだ。




次の瞬間、紬が天使になってしまった。



悲しみに暮れる中、神様だった僕の父が慰め願いを叶えてあげると言ったそうだ。




そこで、紬は「蒼に逢いたい」と願ったそうだ。




父は、蒼に逢うことは出来るが架空の世界でしか会えない。



君は、亡くなっている人間だから体は冷たい。




蒼は、事故で自分が死に生まれ変わって会いに来た、と思っている。



それでも、良いか?と尋ねられたそうだった。



それに、この秘密を知ってしまったら蒼は現実世界へと戻り、君は天使として役目を果たす反面生まれ変われるらしかった。



本来は、色々縛られる現実世界らしい。



でも、それは父の今までの感謝という特別措置だった。




紬は、蒼と49日しか会えないことは知っていた。



でも、その少ない49日間だけでもいいから僕に会いたかったそうだ。




それに了承すると次の瞬間僕が目の前にいたらしい。




あの、冷たい風が吹いたときだ。



あのとき、紬は僕に会えた。




そうして、言う。




「あおっ!49日間よろしくねっ!」と。




これは、僕に宛てたメッセージだった。




よろしく、と僕宛て。




こうして、僕らは29日間過ごした。



10年以上過ごしたあのときよりずっと短かった時間だったが、幸せだった、と紬は言った。




「蒼。



生きて、私が救われたと同時に救ってほしい人間がいる!



だから、蒼。



私が居なくても。



救ってあげて・・・・」




紬は涙ながら泣いていた。



僕も泣いていた。もう、紬は居なくなる。




その事が、たまらなく悔しかった。




「ばいばい、蒼。また、会おうね」




そう言うと、紬はまばゆい光になって消えた。





最後、父の姿が見えたような気が、した。



そうして僕は、意識を失った。
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