トロイメライな世界の中で。〜君と過ごした29日間〜

10年後の願い

紬が亡くなって、10年という歳月が流れた。





今日は、紬の命日だ。




長瀬家の墓と彫られたお墓に行った。




そして、またいつものようにお参りをして紬との思い出を感じるため森が丘公園に行く。




ここ、１０年間のルーティンだ。




ここで、僕はいつも紬からもらったトロイメライを聴いている。




10年という歳月が経っても、街は変わらない。




公園では、小学生たちが鬼ごっこをして遊んでいた。




そんな日常に微笑みながら、オルゴールを聴いているとある一人の少女が僕のもとに歩み寄った。





誰かに似ていて、でもどこかあどけないような顔立ちをしている。




「紬・・・・？」




ふと漏らしたその声に少女は微笑んだ。




その顔は、幼い頃の紬の笑顔と同じだった。



その懐かしい笑みに、胸が締め付けられた。




その微笑みを、僕は一生忘れることはないだろう。




「ただいま、蒼。



またあなたに会えて良かったー」




紬がそう言うと、風とともに紬の長い髪がさらさらと流れ、僕の頬には一筋の光る涙が零れた。




風に揺れる中僕達の周りには、トロイメライの音色が響いていたー。
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