はわわって言えばなんとかなると思ってた~拗らせ次期宰相からの執愛はウザい!~

1.奇跡の呪文「はわわ」

「大丈夫、私ならやれるわ。だって私は奇跡の童顔巨乳美少女、トレイシー・ファルコナーだもの」
 思わずそんなことを呟きながら沈痛な面持ちで挑むのは王城主催の夜会だ。
(まさか両親が借金を残して蒸発するなんてね)
 それも一人娘の私を残して、だ。いや、一周回って私を置いて行ったことは構わない。元々ギャンブル狂いの父に買い物狂いの母だ、正直勝手にしろと思ったっていいだろう。だが突然当主を失った男爵家に雇われた使用人たちはどうなる? 幼い頃から側に居てくれた乳母も、家庭教師なんて雇えない私にありとあらゆることを教えてくれた執事も、庭師も料理長もメイドだって。そんな彼らに払うお給料を持ち逃げして消えたのだ。
「みんなお嬢様のせいじゃないって言ってくれたけど」
 その責は娘である私が背負うべきだろう。だって私は童顔だがとうに成人しているのだ。

 しかし成人していようとも力のない貧乏男爵家の令嬢にできることは限られている。だが私には必殺技があった。「はわわ」である。
 
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