はわわって言えばなんとかなると思ってた~拗らせ次期宰相からの執愛はウザい!~
コンコンと少し控えめなノックの音と共に、ひょっこりと顔を出したのはラピスラズリのような深い青の長い前髪を掻き上げたようにセットし、フローライトのような神秘的な青紫色の瞳をいやらしく細めてニヤニヤと笑う、腹立たしいほど顔の整った美丈夫だった。
「……何しにきたのよ」
じろりと睨みながら恨みがましくそう聞くと、彼の口角がにこりとあがる。
「別に? ただ俺は自分の婚約者の様子を見に来ただけだよ?」
「ッ、ほんっと騙されたんだけど! アンタ最初は自分のこと〝僕〟って言ってたくせにさぁ!」
「ははっ、そうだったかな」
「前髪だって下ろして、気の弱そうなフリをしてたし!」
「それは違うよ。ほら、俺はこの外見だからね。面倒な令嬢を追い払うよりも、そもそも寄ってこないようにする方が簡単ってだけだよ」
(それはまぁ、道理にかなってるけども)
確かに前髪を上げた彼の顔は「はわわ」を持った私ですらドキッとさせられるものがあるし、世の令嬢がきゃあきゃあと彼を囲う想像は簡単にできた。だが、それとこれとは話が違う。
「私、婚約してまでは言ってないのに!」
「責任を取って欲しいと言ったのはトレイシーだろう」
「……何しにきたのよ」
じろりと睨みながら恨みがましくそう聞くと、彼の口角がにこりとあがる。
「別に? ただ俺は自分の婚約者の様子を見に来ただけだよ?」
「ッ、ほんっと騙されたんだけど! アンタ最初は自分のこと〝僕〟って言ってたくせにさぁ!」
「ははっ、そうだったかな」
「前髪だって下ろして、気の弱そうなフリをしてたし!」
「それは違うよ。ほら、俺はこの外見だからね。面倒な令嬢を追い払うよりも、そもそも寄ってこないようにする方が簡単ってだけだよ」
(それはまぁ、道理にかなってるけども)
確かに前髪を上げた彼の顔は「はわわ」を持った私ですらドキッとさせられるものがあるし、世の令嬢がきゃあきゃあと彼を囲う想像は簡単にできた。だが、それとこれとは話が違う。
「私、婚約してまでは言ってないのに!」
「責任を取って欲しいと言ったのはトレイシーだろう」