はわわって言えばなんとかなると思ってた~拗らせ次期宰相からの執愛はウザい!~

5.心配くらいするっての!

 ちぇっと少し拗ねたような気持になった私は、それと同時に自分が何故そんな気持ちになったのかが理解できないまま自室へと戻った。そして翌晩に再び出直したのだが――

「はぁあ? 今日もまだなのぉ!?」
 部屋自体は使われている形跡があるのに、部屋の主がまた戻っていないのだ。そしてそれは翌日だけではなく、そのまた翌日も、翌々日も同じだった。

「アイツ寝てないんじゃないの……?」
 もしや執務室に寝泊まりしているんじゃないだろうか、なんて思え、それがあながち冗談では済まない可能性にぶるりと震える。それほどに彼の持つ地位は厳しく、そして『親が宰相だから』とただ任命されるようなものではないのだろう。
 いつも腹立たしい言い方と笑い方を標準装備にしている男ではあるが、彼自身も自分に厳しく努力しているということは一緒に暮らし始めた今は流石にもう気付いている。
「あぁっ、もう!」
 静まり返った誰もいない部屋にそんな言葉を投げつけた私は、わざとらしいくらい大きなため息を吐きながらひとり厨房へ向かった。
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