はわわって言えばなんとかなると思ってた~拗らせ次期宰相からの執愛はウザい!~
 話しながら次々とグラスを渡され、戸惑ううちにどんどんと飲まされる。正直自衛のためにと何度も訓練したのと、元々の適正もあったのかこの程度では酔ったりはしないけれど、あまり楽しいものではなかった。
「ありがとうございます。リチャード様が贈ってくださったんですの」
(買えなかったんだから仕方ないだろ!)
 なんて内心毒づきつつもこの程度の嫌味では笑顔を崩さない。令嬢というのは表情を崩した方が負けというなんとも面倒な生き物なのだ。
「リチャード様、ね」
 次はどんな嫌味がくるのかと警戒していたが、さらりと流れ令嬢たちの視線が外へと向けられる。その先にいたのはもちろんリチャードだった。
「それにしても驚きましたわ、前髪をあげただけであんなに変わるなんて思いませんでしたわ」
「どうして今までお隠しになっておられたのかしら……」
 ほう、と甘い吐息を零す彼女たちに内心モヤっとしてしまう。今まで彼に見向きもしなかったくせに、だなんて。
(私だってそうだったくせにね)
「それにしても、何のメリットがあってトレイシー嬢をお選びになったのかしら」
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