はわわって言えばなんとかなると思ってた~拗らせ次期宰相からの執愛はウザい!~
 深い青を持っているのはこの国では由緒正しいグレイヴズ侯爵家だけ、しかもグレイヴズ侯爵家といえば代々宰相を務める名家中の名家である。
(その証拠に生地もいいし身に着けている宝飾品も最上級のものだわ!)
 瞳の色は前髪が隠していてわからないが、フローライトのような神秘的な青紫色のはず。どうしてこんなに影が薄いのかはわからないが、影の薄さとお金持ち具合は関係ない。むしろこの気の弱そうな感じは逆に思い通りに動かせそうで私にとってはプラスですらある。侯爵家にはリチャードという息子一人しかいないはずだし、しかも宰相といえば国の智であり厳格で公平な立場の人間だ。そんな一家の息子ならば、使用人たちを軽々しく切り捨てたりはせず、そしてお金も! 持っている!

 ――ここだ。
 私はそう確信し、離れようとしていた体を反転させてその令息の胸へとふらついたフリをして飛び込んだ。

「はわわ、さっきジュースを飲んでから体がとっても熱いんですぅ~っ」
「え?」
「お願いします、リチャード様ぁ、一人じゃ歩けないの。はわわ~困っちゃったのぉ……」
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