言葉の先にあるもの
芸術展
芸術展
次の日、真子に呼び出された。
「今度、障害者芸術展があるらしいよ。本を書いてるんでしょ?」
「小説らしきものは書いてるけど、絵や俳句はわからないし……詩でも書こうかな」
そう言われて、詩らしきものを書いた。
心
心ってなんだろう
ガラスのように一瞬にして粉々に砕け散る
どんなに強い防弾ガラスでも
小さなスキが現れるとあっという間に
粉々に砕け散る
心は感情のままに物事を考えるのか
だから美しいものには素直に
美しいと感じる
たまに、風船のように繊細な心が
うっとおしく感じる時がある
おまえはどうして感情で物事を考えるのか
おまえに知的な感情はないのか
知的な感情はどんなに美しいものを
感じても知性と言う侵入者が
醜い存在にしてしまう
心を打ち壊したい
もう感情に左右される
人生は終わりにしよう
真子に詩を見せると、彼女は「才能あるんじゃない?」と笑顔で言った。その言葉に康二は驚き、そして嬉しさで胸がいっぱいになった。同時に、身体の奥から熱い衝動が走り抜け、心の中で何かが弾けたような感覚に包まれた。「詩で世に出るかもしれない」。その考えが頭をよぎった瞬間、彼の中で想像が次々に膨らみ始めた。真子の言葉に背中を押されるように、康二はその詩を額縁に入れて展示会への申し込みを決めた。自分の作品が誰かに読まれるかもしれないと思うと、不安と期待が交錯し、心がざわつく。だが、真子の「いいじゃん」という一言が、その迷いを吹き飛ばした。9月になると、詩を書いたことで得た喜びが次第に広がり、康二は短い小説を書くようになった。自分の想いを物語の形にすることで、言葉が生きているように感じられた。書き進めるうちに、日常に埋もれていた感情や記憶が掘り起こされるようで、彼自身も驚きの連続だった。そんなある日、毎月購読している公募ガイドを読んでいると、ある募集記事が目に留まった。「来年のバレンタインデーにFM東京で放送される恋文を募集」という案内文。恋文……その言葉に康二の心は大きく揺れた。気がつけば、真子の顔が浮かんでいた。
「これしかない」と康二は決意し、彼女宛てのラブレターを書き始めた。真子との思い出を一つずつ紡ぐようにして言葉を綴った。彼女の笑顔、何気ない会話、そして自分を励ましてくれた優しさ。それらが康二の胸を温め、ペンを止めることはなかった。ラブレターを書き終えると、康二は静かに封筒を手に取り、ポストへ向かった。ポストに投函する瞬間、不安と期待で胸がいっぱいになったが、それでも後悔はなかった。「これが自分の正直な気持ちだ」。そう思うと、彼の心には小さな確信と希望が生まれていた。、
今年も終わりを告げようとしている。障害者芸術展に出品した詩も、特に反響はなく、静かに幕を閉じた。バレンタインデーに読まれる恋文の応募も結果は落選に終わり、康二は少し肩を落とした。そんな中、正月には真子と初詣に行くことになった。冬の冷たい空気の中、神社の参道は参拝客で賑わい、新しい年の希望を胸に秘めた人々の声がどこか温かかった。
次の日、真子に呼び出された。
「今度、障害者芸術展があるらしいよ。本を書いてるんでしょ?」
「小説らしきものは書いてるけど、絵や俳句はわからないし……詩でも書こうかな」
そう言われて、詩らしきものを書いた。
心
心ってなんだろう
ガラスのように一瞬にして粉々に砕け散る
どんなに強い防弾ガラスでも
小さなスキが現れるとあっという間に
粉々に砕け散る
心は感情のままに物事を考えるのか
だから美しいものには素直に
美しいと感じる
たまに、風船のように繊細な心が
うっとおしく感じる時がある
おまえはどうして感情で物事を考えるのか
おまえに知的な感情はないのか
知的な感情はどんなに美しいものを
感じても知性と言う侵入者が
醜い存在にしてしまう
心を打ち壊したい
もう感情に左右される
人生は終わりにしよう
真子に詩を見せると、彼女は「才能あるんじゃない?」と笑顔で言った。その言葉に康二は驚き、そして嬉しさで胸がいっぱいになった。同時に、身体の奥から熱い衝動が走り抜け、心の中で何かが弾けたような感覚に包まれた。「詩で世に出るかもしれない」。その考えが頭をよぎった瞬間、彼の中で想像が次々に膨らみ始めた。真子の言葉に背中を押されるように、康二はその詩を額縁に入れて展示会への申し込みを決めた。自分の作品が誰かに読まれるかもしれないと思うと、不安と期待が交錯し、心がざわつく。だが、真子の「いいじゃん」という一言が、その迷いを吹き飛ばした。9月になると、詩を書いたことで得た喜びが次第に広がり、康二は短い小説を書くようになった。自分の想いを物語の形にすることで、言葉が生きているように感じられた。書き進めるうちに、日常に埋もれていた感情や記憶が掘り起こされるようで、彼自身も驚きの連続だった。そんなある日、毎月購読している公募ガイドを読んでいると、ある募集記事が目に留まった。「来年のバレンタインデーにFM東京で放送される恋文を募集」という案内文。恋文……その言葉に康二の心は大きく揺れた。気がつけば、真子の顔が浮かんでいた。
「これしかない」と康二は決意し、彼女宛てのラブレターを書き始めた。真子との思い出を一つずつ紡ぐようにして言葉を綴った。彼女の笑顔、何気ない会話、そして自分を励ましてくれた優しさ。それらが康二の胸を温め、ペンを止めることはなかった。ラブレターを書き終えると、康二は静かに封筒を手に取り、ポストへ向かった。ポストに投函する瞬間、不安と期待で胸がいっぱいになったが、それでも後悔はなかった。「これが自分の正直な気持ちだ」。そう思うと、彼の心には小さな確信と希望が生まれていた。、
今年も終わりを告げようとしている。障害者芸術展に出品した詩も、特に反響はなく、静かに幕を閉じた。バレンタインデーに読まれる恋文の応募も結果は落選に終わり、康二は少し肩を落とした。そんな中、正月には真子と初詣に行くことになった。冬の冷たい空気の中、神社の参道は参拝客で賑わい、新しい年の希望を胸に秘めた人々の声がどこか温かかった。