言葉の先にあるもの

言葉の先にあるもの

言葉の先にあるもの

「やっぱり、作品を売り込むのはむずかしいな……」と康二がぽつりと呟くと、真子が立ち止まり、意外な言葉をかけてきた。
「でもね、康二が書いてるものって、私にとっては特別なんだよ」
その言葉に、康二は思わず立ち止まる。彼女の顔を見ると、真剣な表情で続けた。
「反響とか、結果とかも大事だけど、それよりも康二が書くことで自分を表現してることが、私は素敵だと思うの」
彼女の言葉は、康二の心に静かに染み込んだ。失敗や挫折ばかりに目を向けていた自分を恥ずかしく感じると同時に、何かがふっと軽くなるような気がした。参拝を終え、屋台の甘酒を飲みながら、康二は真子に尋ねた。
「じゃあ、次はどうしようかな。小説に挑戦するのもありかな?」
真子は嬉しそうに頷いた。
「いいじゃん!康二の中にはまだまだたくさんの物語があるはずだよ。私はそれが読めるのが楽しみ」
その夜、帰宅した康二は机に向かい、新しい物語のプロットを書き始めた。頭の中に浮かんでいたのは、これまでの自分の経験や、真子とのやりとりが作り上げた断片的な記憶。それらがひとつの物語へと形を変えていく感覚に、胸が高鳴った。
「これでいいんだ」と康二は心の中で呟く。評価や結果だけではなく、言葉を紡ぐことで自分を表現できる喜びを取り戻した彼は、新しい年のスタートに向けて動き出していた。

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