年の差十五の旦那様 外伝①~捨てる恋あれば、拾う恋あり?~
第4話 お仕事
(いや、意味がわからないんだけど!?)

 だって、お貴族さまっていうことは、裕福なはず。空腹で倒れるなんてありえない。

 ついでに、エインズワース家が貧しいというお話も聞いたことがない。

「……えぇ、そうです」

 彼、アシュリーさんが気まずそうに視線を逸らした。その姿に、私の涙は引っ込む。

「実は俺、両親と喧嘩をしまして」
「……はぁ」
「だから、逃げてきました。いわば家出ですね」

 うん、そっか。家出か。理解したわ。けど。

「あの、アシュリーさんは今までの人生で家出をしたことは?」
「これが生まれて初めての家出です」
「でしょうね」

 もっとこう、家出っていうものは計画を立ててするものじゃないの?

 それくらい子供でも分かるでしょうに。

 私がアシュリーさんをジト目で見つめると、彼が頬を掻いた。

「俺、三男坊で末っ子なんです」
「は?」
「両親は過保護でして。かと思ったら、今度はそろそろ結婚しろとうるさくてかなわなくて」

 首を横に振りつつ、淡々と言葉を紡いでいく彼。うん、大体読めた。

「ご両親が提案したお相手が気に入らなかったのですか?」

 オブラートに包もうとして、包んでいない言葉が出てしまった。

 でも、アシュリーさんは気にする様子もなく、首を縦に振った。
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