年の差十五の旦那様 外伝①~捨てる恋あれば、拾う恋あり?~
「いや、だって普通嫌でしょう。俺、恋愛結婚したいんで」

 つまり、彼は夢見がちなのだ。一瞬でそこまで理解した。

「あのですね、恋愛結婚なんて――」

 ――やめたほうがいいですよ。

 そう言おうかと思った。だけど、言えなかった。だって、これはあくまでも私の主観に過ぎない。

(それに、今の私は冷静じゃないし)

 ノーマンにフラれて、一時的に恋愛が無理になっているだけかもしれない。

 だったら、私があれこれ言うのはダメだ。

 うん、ダメダメ。

「……ロザリアさん?」

 アシュリーさんが私の顔を覗き込んでくる。

 彼の美しい瞳が私を射貫き、心臓がドキッと跳ねたような気がした。頬に熱が溜まっていく。

「な、なんでもないですっ!」

 アシュリーさん、まじまじと見るとすごくお顔がいいのよね……。男前っていうの? それともイケメンのほうが適切?

 とにかく、美形ということ。

(旦那さまも美形だけどね……)

 不意に思い出したのは、私の雇い主であるリスター辺境伯……ギルバート・リスターさまのこと。

 彼も相当な美形だ。ただ、アシュリーさんとはタイプが違う。彼はどちらかと言えば強面で、女性子供には怯えられるタイプだもの。

(そういえば、旦那さまと奥さまも恋愛結婚に入るのかしら……?)

 あのお二人は年の差があるとは思えないほど、仲睦まじい。

 奥さまは旦那さまにべた惚れだし、旦那さまも隠しているようだけど、奥さまにべた惚れ。使用人たちにはバレバレだけどね。

「あの、ロザリアさん」

 ぼうっとしていると、アシュリーさんに声をかけられた。ハッとして彼のほうに意識を戻す。

 彼は困ったような表情を浮かべていた。
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