年の差十五の旦那様 外伝①~捨てる恋あれば、拾う恋あり?~
(……どうして)

 私は下唇を噛んだ。

(連絡は途絶え気味だったし、会うことも少なかったわ。だけど、破局するなんて思わないじゃない!)

 ノーマンはちょっと女々しくて、束縛も激しい男性だった。でも、真摯なところとか、真面目なところとか。好きだった。

 彼も私も子爵家の生まれで、身分も釣り合いが取れている。私の家は魔法使いの名家で裕福。対するノーマンの実家は少し貧しいけど、私が魔法使いとして稼いでいれば問題ないレベルだった。

(確かに蔑ろにしたのは私かもしれないけど)

 だけど、彼はそれを咎めてくることはなかった。

 ノーマンの性格上、嫌だったらこちらに怒鳴り込みに来ただろうし、手紙だって送ってきたはず。

 一体、なにがあったのか。

(それとも、本当に私に愛想が尽きちゃったの?)

 仕事ばかりで、女っぽくなくて、色気がないと今まで散々言われてきた。

 でもでも、ノーマンはそんなところも好きだって言ってくれていた。もしかして、私は油断したの?

(そうよ。人の心なんて簡単に変わるものよ。努力を怠った私が、悪いの)

 ノーマンの心が離れていないように。愛想を尽かされないように頑張るのが、私の役目だったんだろうな。

 失ってから気が付くなんて、私はなんと間抜けな女なのだろうか。

「本当、仕事のことしか頭にないのね、私って」

 これじゃあ、ノーマンが言った「仕事と結婚しろ」というのも当たっているのかもしれない。

 もしかしたら、仕事と結婚したほうが幸せになれるのかも――とまで考えて、虚しくなってやめた。
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